人生で最初に、そして今のところ最後に行ったライブがある。『plenty』というバンドの解散ライブである。
解散ライブに行くきっかけ
馴染めない大学生活
そのころ私は大学生で、上手く馴染めない大学生活に鬱々とした感情を抱えていた。とにかく友達がいなかった。
研究が大好きだったので、研究室だけが私の救いだった。それ以外の場所は、すべて敵陣だった。グループワークを先生から告げられると、体も口も固まった。自分だけが1人取り残されることもあった。今思うと完全におかしな奴である。それでも持ち前の執念で、なんとか単位は取った。
ただ、未だに大学の授業に遅刻する夢、初回ガイダンスの場所が分からない夢、テストがまったく解けない夢などを見る。多分1か月に1回は見る。トラウマか。
plentyというバンドの解散
plentyというバンドは、高校生のときに知った。Youtubeのおすすめか何かで偶然知ったのだと思う。幼い子供の声のようなボーカルが、自分のインナーチャイルドの気持ちを代弁してくれているようだった。新曲が出るたびに、わくわくしながらYoutubeを開いたり、CDを買ったり、MUSICAという音楽雑誌を読み込んだりした。
今から6年前の、蒸し暑い季節だった。そんな大好きなバンドが解散すると知って、衝動的に申し込んだチケットが当たった。そもそも、バンドのライブに申し込んだのも初めてのことだった。それくらい、衝動的だった。未だにこんな体験はしていない。
解散ライブへ
野音でレインコートをまとう
場所は日比谷野外音楽堂。その日はしとしととした雨がコンクリートに打っていた。野外なので、行きがけにコンビニでレインコートを買った。日比谷駅のトイレでレインコートを着ようと思ったら、自分とは明らかに毛色の違う女性数人組がお色直しをしていた。彼女らはライブグッズを身につけ、これから行われる解散ライブについての思いをおのおの大きい声で語っていた。なんだか居心地が悪かった。
席に向かうと、既に両隣には人がいた。どちらもお一人様での参戦のようだった。少し安心したのを覚えている。
音に包まれる
ライブは前置きもなく、突然始まったように思う。初期の曲のイントロが突然野音に響いて、急に違う場所、違う空間に飛ばされたような感覚だった。曲と曲の間だけ、しとしとと降る雨の音がする。レインコートから滴る雨粒が、たまに顔にぽたりと落ちてくる。次第に雨音は強まり、顔に落ちてくる雨粒も大きくなってくる。その瞬間だけ、自分の存在を把握する。そのくらい、彼らに釘付けになってしまった。彼らが放つ音に、自分の存在ごと包み込まれてしまったようだった。その感覚にただ身を任せていると、1時間を超えるライブはあっという間に終わっていた。途中で強まった雨は、終わるころにはまたぽつぽつとした雨になっていた。
解散、大学生活の終わり
今日も雨ですね。それでも精一杯やるのでお願いします。そんなことを彼らは言っていたように思う。雨男だったのかな。彼らはレイングッズなんて身につけずに、野音でのライブをやりきった。雨の中、スポットライトに照らされる彼ら。その姿は、私の暗くてジメジメとした大学生活を照らしてくれた光、そのものだった。
今週のお題「レイングッズ」