選択的会社員

うつ、休職を経たアラサーOLが会社員生活の中で感じるひそやかな幸せ

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鎌倉で今を感じる、愛おしく思う

普段はあまり遠くに行かずインドア~な生活をしている私だが、日帰りの小旅行をしてきた。あまりにも楽しかったので、誰かの参考になればと思いまとめる。

 

K嬢と鎌倉へ

私にはK嬢という面白く尊敬できる友人がいる。大学の同級生で、自分のやりたいことに忠実なパワフルな女性だ。大学時代はそのパワフルさに振り回されるような気がして、彼女と距離を取って接していた。しかし、人との関係性というものは、歳を重ねると思いもよらない方向に変化することがある。K嬢との関係性はまさにそういったもので、大学を卒業してから何年も経つ今に至るまで、不思議で楽しい交流が続いている。

K嬢は会社員ではなく、個人事業主だ。K嬢に休職中であることを話したら、いいじゃん!平日の日中に一緒に遊ぼうよ!と目をキラキラさせていた。心配よりも、楽しい未来に思いを向けてくれる彼女のパワフルさが、今の私には丁度いい塩梅になっている。

そんなK嬢の案内の元、鎌倉へ足を延ばした。私がお茶に興味を持ち始めたことを話したら、K嬢もかねがねお茶に興味があったらしく、彼女のお気に入りのお茶が飲める場所を案内してくれることになった。ちなみに私がお茶に興味を持ち始めたのは、以前記事に書いた『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』という本の影響だ。

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報国寺で竹林と一杯目のお抹茶を

午前十時半に鎌倉駅でK嬢と待ち合わせをし、バスで十分弱揺られて報国寺へ。報国寺には四季折々の草花が丁寧に植えられ、手入れされていた。今の季節は牡丹が落ち始め、桜のつぼみがふっくらと春に向けて準備をしているところだった。

3月の報国寺

3月の報国寺

四季折々の入口を抜けると、報国寺の目玉である竹林の道が続く。ダイナミックな自然そのままの姿ではなく、人の手によって整えられ、端正に空に向かって背を伸ばす姿。その姿に見惚れてしまった。竹林の中はいつもと違う澄んだ空気が流れているようで、まるで違う世界のようだった。竹林の先にはお茶をいただけるお休み処があり、そこで一杯目のお抹茶をいただいた。風によって草木がさわさわと揺れ、遠くの方で鳥がピチュピチュと鳴き、林を流れる水がぽた、ぽたと土へ落ちる。普段は意識できないこれら自然のありように包まれながら、少し苦めのお抹茶をゆっくりと味わった。

竹林とお抹茶

竹林と一杯目のお抹茶

浄妙寺で石庭と二杯目のお抹茶を

次は歩いて五から十分ほどのところにある浄妙寺へ。浄妙寺には『喜泉庵』という広いお茶室があり、お茶室から丹念に手入れされた石庭を楽しんだ。石庭には水琴窟があり、庭を眺めながら水滴の落ちる音を何度も聴いた。そうしていると、普段の生活のことなんてすべて忘れられるようだった。

浄妙寺のお茶室、お手洗いにあったお花

浄妙寺のお茶室、お手洗いにあったお花

そして、二杯目のお抹茶を上生菓子と共にいただいた。上生菓子は『ひとひら』という名前のものだという。お茶室には『無心』と書かれた掛け軸が掛けられていた。どこかでウグイスがほーほけ、ほーほけきょきょ、と鳴いていた。春はもうすぐ。

浄妙寺のお抹茶

二杯目のお抹茶

お昼ご飯はスープカレー

鎌倉駅近くにあるスープカレーのお店『Rojiura Curry SAMURAI.鎌倉店』でお昼ご飯を食べた。辛さ、お肉の種類、ご飯の量、トッピングを自分で選べる。辛さは全部で十段階あるうちの三番目に辛いものを選んだが、十分辛く、気持ちいい汗をかけた。

お昼ご飯

お昼ご飯

kominka.でねりきり細工体験と三杯目のお抹茶を

午後は鎌倉駅から電車で一駅のところにある『kominka.』へ。今回の小旅行の主目的である、ねりきり細工の体験ができるお店だ。お店はリノベーションされた古民家で、風情のある玄関をくぐると若い女性2人組が出迎えてくれた。発起人とその友人の二人で運営しているのだという。

ねりきりは、三つの難易度から選べる。私たちは強気にも、最も難しい『さくら』のねりきりを選んだ。あらかじめ用意されたパーツごとの丸いねりきりを、自分の手でさくらの花に仕立て上げていく。まずはピンクのねりきりをせんべい状に押し広げ、中心に白い小さなねりきりをちょん、と置く。白いねりきりを指で優しく押し、輪郭をぼかすと、中心から外に向かって白からピンクのグラデーションができた。その面を裏返し、中身となる白あんのねりきりを包み込んでいく。これが難しくも楽しかった。職人がものすごい速さでやっているアレは、すごいことなのだ。包み終わったら、『三角棒』という道具を使って五等分になるよう切れ目を入れていく。最もさくららしくなる工程であるからこそ、最も難しくもあった。そして、茶こしでこした粒状の黄色いねりきりを中心に少しだけのせる。最後に、花びら一枚一枚に三角棒で切れ目を入れて完成。私が作ったものは、切れ目がエッジ―すぎて切り絵のようになってしまった。お手本は、もっとふくよかで丸々としていたのだ。お手本と違うことにがっかりしていると、K嬢が「あなたの作ったもの、すごく好き。写真撮っていい?」と言ってくれた。そうだ、別にお手本通りに作らなくたっていいんだ。K嬢の型にはまらない生き方、考え方に何度も感銘を受けてきたが、今回も救われたのだった。

作ったねりきりを、自分で選んだ好きな器にのせる。私はさくらの淡いピンクが映えるよう黒色をベースにし、かつ愛らしさも出るように水色の器も選んだ。そして自分で点てたお抹茶と共にいただいた。初めて自分で点てたお抹茶は、お寺で飲んだものよりもすっきりとした後味だった。「初めてにしてはたくさん泡が立っていて、お上手ですね。」と声をかけていただいた。そちらこそ、お上手ですこと。すごくいい気になってしまった。

作ったねりきり

自分で作ったねりきり

お抹茶と共に

お抹茶と共に

最後に

「ストレスが溜まったらよく鎌倉に来るの。ストレスなんかどこかにいっちゃうから。あと京都に行かなくても京都気分が味わえるからね。」K嬢は本当に楽しそうにそう教えてくれた。お気に入りの場所を教えてくれたこと、そこへ連れてきてくれたこと、たくさん笑い合ったこと、すべてが愛おしい時間だった。今度は鎌倉で精進料理を食べたいねと言って、夕方五時ごろに解散した。近い将来、K嬢と食べた精進料理の記事が書けるといいな、と心から思う。